シロ

最近歯医者に通っている。

齢を重ねるにつれ確実に歯も悪くなるらしく、治す所がたくさんあるらしく、もう何ヶ月も通っている。だんだん歯が銀色に変わってゆくのが不気味でもある。

さて、今日は前回型を取った銀歯を詰める日だ。お医者さんが銀歯を歯に押し込み、取り外してそれを削って修正する。もう何回もやっているのでおなじみのプロセスだ。こういう日は痛くないので治療を受けるこちらも気楽なものだ。

しかし今日は取り外して修正する回数がやけに多い。銀歯を取り外すと椅子を起こされ、口をゆすいでください〜と言われるのだがそんなに何回もバッタンバッタン寝起きしたりすると疲れてきた。まだ終わらないのかなあ。

そして、お医者さんが力のない声で看護婦さんに呼びかけた。

「XXさ〜ん、今日はシロで」

シロって何なんだろう。

すると何故かもう一度その歯の型を取られた。そして銀歯ではなく仮の詰め物をされた。おしまい。

「最後の段階で失敗しました。どうもすみません。また来週同じところをやりましょう。」

そうなのか。弘法も筆のあやまり、河童の川流れ、サルも木から落ちる、ローマは一日にして成らず、だな。

会計に行くと先ほどの看護婦さんがいて、

「今日は御代はなしです、そういうことなので。」

と言われた。


なるほど、「シロ」ね。